電子帳簿保存法は、国税関連の記録書類を電子的に保管する際の法律です。原則、国税に関わる帳簿書類は本来の形式で原本保管をすることが要求されますが、電子帳簿保存法により特定の条件下の保管・保存であれば電子保存が認められています。
電子保存にあたって、一部の書類の保存ではタイムスタンプが必要です。タイムスタンプが必要な範囲と利用方法、発行手順、費用感について説明していきます。
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電子帳簿保存法(電帳法)とタイムスタンプとは?
電子帳簿保存法の法律とは何か、タイムスタンプとは何か、まずは大きな括りの内容から見ていきましょう。
電子帳簿保存法とは?
電子帳簿保存法は、帳簿書類の電子情報・電子データを取引などの証拠として保存・保管するために制定された法律です。
電子帳簿保存法では、会計ソフトで作成したデータや国税関連の帳簿書類の電磁記録、COM(コンピュータ出力マイクロフィルム)の保存・保管要件、請求書などの国税関連書類のスキャン・スキャナ保存の要件、電子取引データの保存・保管などが規定されています。
電子帳簿保存法の対象となるのは、以下のような国税関連の帳簿書類です。
法人や個人事業者が保存・保管する国税関連の書類の大部分は、電子帳簿保存法の対象として電子的に保存することが義務付けられています。
電子帳簿保存法が制定される前は、国税関連の帳簿書類は紙の形で保存することが求められていました。しかし、電子帳簿保存法の制定により、紙だけではなく、要件を満たす場合には電子データとして保存することも認められるようになりました。
近年では、ITの進歩により、帳簿書類・文書をパソコンなどの電子機器・デバイスで作成することが一般的になってきています。電子帳簿保存法による電子データの保存が認められることで、事務作業の負担が軽減され、書類・文書の保管スペースの節約などが可能となり、効果が期待されています。
電子帳簿保存法について詳しく理解したい方は、こちらを参照ください。
タイムスタンプとは?
タイムスタンプとは、特定の時間にそのデータが存在していた証明、またその時間以降データが改ざんされていないことを証明する技術を指します。電子帳簿保存法で使われるタイムスタンプは、利用者が生成する原データのハッシュ値(メッセージダイジェスト)と時間情報を組み合わせて作られます。
タイムスタンプは利用者自身が発行するものではなく、第三者である時間認証局がハッシュ値と時間情報を組み合わせて発行することで、その透明性が保証されます。これは郵便局の日付印のようなものと考えてもよいでしょう。
ハッシュ値は、データが特定のルール(ハッシュ関数)によって生成された値を指します。原データが1ビットでも違うと全く異なるハッシュ値が生成されるため、電子データの指紋のような特性を持つと言われています。これはほとんど改ざんができない構造になっているため、特定の時間における電子データの存在の証明、またタイムスタンプが付けられた後の改ざんがないことを証明する役割を果たしています。
タイムスタンプの必要性はどの程度?
電子帳簿保存法には、電子帳簿保存、スキャナ保存、電子取引の3つのカテゴリーが存在しますが、それぞれのカテゴリーでタイムスタンプが必要となるのはどの場面でしょうか。それぞれのカテゴリーにおけるタイムスタンプの取扱いについて詳しく見ていきましょう。
スキャナ保存とは?
スキャナ保存が適用されるのは、一貫してコンピュータで作成していない自社発行の書類・文書の控え・コピー、および電子データ以外の形式で受け取った請求書や国税関連の書類・文書などです。原本をスキャナなどを用いて読み取り、電子保存することから、この方法はスキャナ保存・スキャン保存と呼ばれています。
スキャナ保存・スキャン保存においては、タイムスタンプの付与が要件の一部として定められています。要件によれば、スキャン・スキャニングした国税関連書類・文書に対して、一つの入力単位ごとに総務大臣認定の時間認証業務に関連するタイムスタンプを付けなければならないとされています。
一つの入力単位とは、取引を構成する書類・文書のセットを意味します。複数のファイルが一つの請求書を構成している場合、それらが一つの入力単位として確認できれば、それら全てにまとめてタイムスタンプを付けることができます。ただし、関連性のない複数のファイルを一つの入力単位として扱うことは認められていません。
入力期間については、基本的には早期入力方式(おおよそ7営業日以内)、業務サイクル方式(最長2ヶ月+おおよそ7営業日以内)の2つの方法があります。
業務サイクル方式は月末締めの処理を前提としたもので、受領から入力までの各業務処理ルールを設定している場合にのみ選択できます。ただし、資金や物の流れに直結しない重要度の低い書類・文書(注文書など)は適宜入力も許されています。
また、訂正削除履歴が残る時間証明機能を持つシステムに保存する場合、タイムスタンプの要件を代替することも可能です。このケースでは、タイムスタンプは不要となります。
電子取引・デジタル取引
電子取引・デジタル取引とは、電子メールやシステムを通じて電子データ形式で送受信される、または国税関連の文書のことを指します。電子取引・デジタル取引においては、特定の条件を満たす電子データの保存が義務付けられています。
(※ただし、令和5年12月31日までは紙のプリントアウトによる保存も許可されています)。
電子取引・デジタル取引においては、タイムスタンプ付与は必須条件ではありませんが、選択可能な条件となっています。これは、以下のいずれかの手段を採用することが条件となっているためです。
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タイムスタンプ付与後に送受信する
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速やかにタイムスタンプを付与
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改訂や削除の履歴が追跡可能なシステムを用いて送受信・保存を行う
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改訂や削除を防止するための業務手続きの規定を設ける
すなわち、タイムスタンプを付与してから相手に送信するか、タイムスタンプのない書類・文書を受け取った際にすぐに付与するか、規定のシステム上での送受信・保存を行うか、事務・業務手続きの規定を設けるかのいずれかを実行しなければならないというわけです。
事務・業務手続きの規定だけでも条件を満たすことが可能ですので、電子取引・デジタル取引においてタイムスタンプの付与は必須ではないということです。事務・業務手続きの規定の例は、以下の国税庁のウェブサイトでも公開されています。
電子帳簿等保存
電子帳簿等保存とは、電子計算処理システムを通じて一貫して電子的に作成される国税関連の帳簿書類・文書のことを指します。会計ソフトで作成した帳簿(仕訳帳や総勘定元帳など)やパソコンで作成した自社発行の書類(注文書や領収書など)のコピー、決算関連書類・文書(貸借対照表や損益計算書など)などがこれに該当します。
電子帳簿保存法における電子保存の要件にはタイムスタンプの付与は含まれていません。
タイムスタンプの利用方法
タイムスタンプを付与するためには、「時刻認証局との契約」「インターネット接続環境」「付与システム」の3つが必要となります。
時刻認証局は、時刻配信局が提供する時刻情報を基にタイムスタンプを発行する組織で、認定された事業者は「時刻認証業務認定マーク」が授与されます。
時刻認証局からのタイムスタンプの付与はインターネット通信を介して行われるため、最低限インターネットが利用できる環境を整備する必要があります。
また、タイムスタンプの付与と管理には、電子帳簿保存に適した文書管理システムの導入が求められます。
これらの準備が整えば、タイムスタンプの利用が可能になります。
タイムスタンプの発行手順
タイムスタンプの発行は以下のステップで進められます。
1.タイムスタンプ付与の準備
対象となる書類・文書のスキャン等を行い、電子データに変換します。
次に、変換した電子データ、またはデジタル取引で受け取った電子データを、タイムスタンプが付与可能なシステムにアップロードします。
2.タイムスタンプ発行の要請
システム上でデータをハッシュ値に変換し、時刻認証局にタイムスタンプ発行を要請します。
3.タイムスタンプの発行
要請を受けた時刻認証局は、利用者から受け取ったハッシュ値と時刻情報を組み合わせてタイムスタンプを発行します。
タイムスタンプの発行と付与の仕組みは以上のようになりますが、多くの文書管理システムでは、システムにデータをアップロードした時点で自動的にタイムスタンプが付与される仕組みになっています。
タイムスタンプの利用方法
タイムスタンプを付与するためには、「時刻認証局との契約」「インターネット接続環境」「付与システム」の3つが必要となります。
時刻認証局は、時刻配信局が提供する時刻情報を基にタイムスタンプを発行する組織で、認定された事業者は「時刻認証業務認定マーク」が授与されます。
時刻認証局からのタイムスタンプの付与はインターネット通信を介して行われるため、最低限インターネットが利用できる環境を整備する必要があります。
また、タイムスタンプの付与と管理には、電子帳簿保存に適した文書管理システムの導入が求められます。
これらの準備が整えば、タイムスタンプの利用が可能になります。
タイムスタンプのコスト
タイムスタンプの付与を支援するサービスには、タイムスタンプの付与だけを目的としたものから、電子契約システムに組み込まれたものまで、様々なタイプが存在します。
タイムスタンプサービスの利用には、約1万円程度の初期設定費用とシステムによって異なる使用料が一般的に必要となります。
利用料金は、月額または年額の固定料金(タイムスタンプサービスの場合、数千円から1万円程度)もあれば、付与するタイムスタンプの数に応じて追加料金が発生するタイプ(例えば、タイムスタンプ1つにつき10円など)もあります。
電子保存の状況に応じてタイムスタンプの環境を準備
過去の電子帳簿保存法ではタイムスタンプが必須要件とされていました。しかし、近年の要件緩和により、必ずしもタイムスタンプの付与が必要ではなくなりました。
しかし、電子帳簿保存法の3つの分類のうち、スキャナ保存では基本的な要件としてタイムスタンプ付与の規定が残っています(※ただし、特定の機能を持つシステムによる保存に変更することも可能)。自社の取引形態に応じて、必要なタイムスタンプの環境を整備しましょう。
よくある質問
タイムスタンプとは何ですか?
タイムスタンプは、利用者のリクエストに応じて時刻認証局が発行するもので、ハッシュ値と時刻情報を組み合わせたスタンプです。このスタンプは、スタンプが付けられた後にデータが改ざんされていないことを証明します。
タイムスタンプはどの程度必要ですか?
電子帳簿保存では不要ですが、スキャナ保存では一つの要件(規定のシステムによる保存に変えることも可能)、電子取引・デジタル取引では選択要件となっています。
※掲載している情報は記事更新時点